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神戸地方裁判所 昭和61年(ワ)1647号 判決 1988年3月24日

原告

清水浩行

被告

金川忠良

主文

一  被告は、原告に対し、金二七三万五七五六円及びこれに対する昭和五八年九月二七日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを四分し、その三を原告の、その余を被告の、各負担とする。

四  この判決は、原告勝訴部分に限り仮に執行することができる。

事実

一  当事者双方の求めた裁判

1  原告

(一)  被告は、原告に対し、金一〇〇〇万円及びこれに対する昭和五八年九月二七日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

(二)  訴訟費用は、被告の負担とする。

(三)  (一)につき仮執行の宣言

2  被告

(一)  原告の請求を棄却する。

(二)  訴訟費用は、原告の負担とする。

二  当事者双方の主張

1  原告の請求原因

(一)  別紙交通事故目録記載の交通事故(以下本件事故という。)が発生した。

(二)  被告は、加害車の保有者である。

よつて、被告には、自賠法三条により、原告の本件損害を賠償する責任がある。

(三)(1)  原告は、本件事故により、右下腿開放骨折の傷害を受けた。

(2)  原告の本件受傷治療の経過は、次のとおりである。

神戸市灘区押ノ木通所在金沢灘病院へ昭和五八年九月二七日から昭和五九年三月二〇日まで、同年八月一三日から同月二五日まで合計一八八日間入院し、昭和五九年三月二一日から昭和六〇年八月一五日まで通院(実治療日数一五日)した。

(四)  原告は、本件事故により、次の損害を受けた。

(1) 治療費 金四七二万二〇七六円

ただし、被告において既に支払済である。

(2) 入院雑費 金一八万八〇〇〇円

一日当り金一〇〇〇円の割合で一八八日分。

(3) 入院付添費 金一六万八〇〇〇円

原告の母が、原告の入院期間のうち四〇日同人に付添看護した。その付添費用は、一日当り金四〇〇〇円の割合相当である。

(4) 付添及び入退院通院交通費 金一〇万円

(5) 診断書料 金八〇〇〇円

(6) 医師等謝礼 金七万一五〇〇円

(7) アルバイト休業損害 金五〇万六〇〇〇円

原告は、本件事故当時、アルバイトに従事していたところ、本件受傷により右収入を得ることができなかつた。

(8) 後遺障害による逸失利益 金八〇三万〇六七七円

(イ) 原告の本件受傷は、昭和六〇年八月一五日症状固定し、右足関節の運動障害、右下腿部内後部に開放創瘢痕四ケ所、レントゲン像にて骨折部は五度の後方凸変形治療、骨折部内側に一一センチメートルの手術瘢痕、労働時に下腿下三分の一骨折部より足関節部の疼痛、つつぱり感の後遺障害が残存した。

右後遺障害は、後遺障害等級一二級に該当する。

(ロ) 原告は、昭和六二年四月、大学を卒業して就労したが、同人は、当時二二歳であつた。したがつて、同人の本件後遺障害の継続期間は、就労可能期間の四五年であり、右後遺障害による労働能力喪失率は、一四パーセントである。(少くとも後遺障害等級一四級該当の労働能力喪失率五パーセントはある。)

しかして、原告の得べかりし給与は、少くとも賃金センサス昭和六〇年第一巻第一表産業計企業規模計男子労働者学歴計二〇歳~二四歳の給与年額金二四六万九二〇〇円である。

(ハ) 右の各事実を基礎として、原告の本件後遺障害による逸失利益を算定すると、金八〇三万〇六七七円となる。

246万9200円×0.14×23.231=803万0677円

(ただし、二三・二三一は、新ホフマン係数)

なお、原告の本件後遺障害がその障害等級一四級に該当するとするならば、その逸失利益は、金二八六万八〇九九円となる。

246万9200円×0.05×23.231=286万8099円

(9) 慰謝料 金四三〇万円

<1> 入通院分 金二〇〇万円

<2> 後遺障害分 金二三〇万円

合計金四三〇万円

(10) 弁護士費用 金一〇〇万円

(五)  よつて、原告は、本訴により、被告に対し、本件損害合計金一四三七万二一七七円(ただし、本件損害のうち治療費金四七二万二〇七六円を除く。)のうち金一〇〇〇万円およびこれに対する本件事故当日である昭和五八年九月二七日から支払ずみまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

2  請求原因に対する被告の答弁および抗弁

(一)  答弁

請求原因(一)、(二)、(三)(1)の各事実は認める。同(四)につき原告が本件事故により損害を受けたこと、同(四)(1)の事実、同(四)(8)(イ)のうち後遺障害等級部分を除くその余の事実は認める。原告の本件後遺障害は、その障害等級一四級一〇号に該当するものである。

(二)  抗弁

(1) 本件交差点は、その南西部に阪神高速道路摩耶入口が存し、右入口の前方見とおしが原告被告双方にとつて極めて悪い、変形交差点である。しかも、本件事故当時は、激しく降雨していた。

(2) 原告は、本件事故直前、右交差点内を北進したのであるが、自車の前方を、被告車に先行する数台の車両が先に右折進行した。このため、原告は、被告車の直先行車両を非難の気持で見送りながら走行していたとき、被告車が更に対向右折して来た。原告は、驚いてハンドルを左に切り被告車を避けようとしたが間に合わず、本件事故が発生した。なお、本件衝突直前、被告車は完全に停止していた。

(3) 右各事実に基づけば、原告の方にも本件事故発生に対する過失が存在した。即ち、本件交差点は右のとおり原告被告にとつても見とおしが極めて悪く、しかも天候も右のとおりであつたから、原告としても、自車前方を右折して行く車両の動向等を脇見せず、前方を十分に注視して進行すべきであつた。原告は、これを怠り本件事故を惹起した。

よつて、原告の右過失は、原告の本件損害の算定に当り斟酌されるべきである。

3  抗弁に対する被告の答弁

抗弁事実中本件交差点南西部に阪神高速道路摩耶入口が存在すること、本件事故当時雨天であつたこと、原告車が本件事故直前右交差点を北進したこと、右事故発生直前、原告車の直前を右折進行した車両があつたこと、被告車がその直後に右折進行して来たこと、本件事故が発生したことは認めるが、その余の抗弁事実は、全て否認。原告の過失に関する主張は、全て争う。

原告には、本件事故発生に対する過失がない。

原告は、本件事故直前、本件交差点手前で、対面信号機の標識赤にしたがつて一旦停止した。その時、原告の対面右側車線(二車線あり、これを進行する車両は、全て本件交差点南西部にある阪神高速道路摩耶入口へ進入する。)には、信号待ちをする四輪自動車がスモールランプで一旦停止していた。原告は、対面信号機の標識が青に変つたので通常の速度で発進進行したところ、対面右側車線のうち原告から向つて左側の四輪自動車が、右標識の変わる前後に、前照灯に切り換え急発進して高速度で、既に右交差点内を北進進行中の原告車の直前を、右高速道路摩耶入口へ向け走行し去つた。原告は、右車両の動向を予見できたので別段危険を感ぜず、ただ無謀運転と思いつつ従前の速度で進行したところ、対面右側車線のうち原告から向つて右側に一旦停止していたはずの被告車の前照灯が突然照らされ、その瞬間、本件事故が発生した。

当然のことながら、本件交差点では、北進する原告車の方が、被告車に比べ優先する道路である。

右の事実関係からして、原告には、本件事故発生に対する過失がない。

三  証拠関係

本件記録中の書証、証人等各目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一1  請求原因(一)、(二)、(三)(1)の各事実、同(四)につき原告が本件事故により損害を受けたこと、同(四)(1)の事実、同(四)(8)(イ)のうち後遺障害等級部分を除くその余の事実は、当事者間に争いがない。

2  被告は、請求原因(三)(2)の事実を明らかに争わず、弁論の全趣旨によつても争つたものとは認められないから、右事実を自白したものとみなす。

3  そこで、原告の本件損害の内容について判断する。

なお、被告は、原告主張にかかる本件損害の内容につき明らかに争わないが、弁論の全趣旨によれば必ずしもこれを争わないとはいえない。したがつて、右損害の内容については自白の成立を認めることができない。

(一)  入院雑費 金一八万八〇〇〇円

原告が本件受傷治療のため一八八日間入院したことは、前叙のとおり当事者間に争いがないところ、原告本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる甲第一二号証の一ないし八によれば、原告が右入院期間中雑費を支出したことが認められる。

しかして、本件損害としての入院雑費は、一日当り金一〇〇〇円の割合で一八八日分合計金一八万八〇〇〇円と認めるのが相当である。

(二)  入院付添費 金一四万円

原告の本件受傷の部位程度は、前叙のとおり当事者間に争いがなく、右事実と弁論の全趣旨によれば、原告の入院期間中ある程度の期間付添を必要としたことが認められる。

しかして、前掲甲第一二号証の九及び弁論の全趣旨によれば、原告の母親が原告の右入院期間のうち付添を必要とする四〇日間同人に付添つたことが認められる。

そこで、本件損害としての右入院付添費は、一日当り金三五〇〇円の割合で四〇日分合計金一四万円と認めるのが相当である。

(三)  付添及び入退院通院交通費 金六万六〇〇〇円

原告の本件受傷の部位程度については、前叙のとおり当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第一〇号証、証人清水正二の証言及び弁論の全趣旨によれば、原告の自宅と同人が本件受傷治療のため入通院した病院との間には可成りの距離があり、同人が右入通院をするにつき相当の交通費を要したことが認められる。

しかして、右認定を総合すると、本件損害としての本件入通院交通費は、合計金六万六〇〇〇円と認めるのが相当である。

なお、原告は、付添交通費をも本件損害として主張しているが、右交通費については、その必要性、付添つた者、その日数等の具体的主張がないため、これを肯認することができない。

(四)  診断書料 金八〇〇〇円

前掲甲第一二号証の八及び弁論の全趣旨によれば、原告は診断書料として金八〇〇〇円を支出したことが認められる。

よつて、右診断書料金八〇〇〇円も、本件損害と認めるのが相当である。

(五)  医師等謝礼 金五万円

前掲甲第一二号証の一、二、証人清水正二の証言によれば、原告は、昭和五八年九月二八日入院病院の看護婦への謝礼として金三万円、同年一〇月一二日右病院医師への謝礼として金二万円を支払つたこと、右日時以外にも右病院関係者に謝礼を支払つたことが認められる。

しかして、本件事故の損害と認め得るのは、原告の右謝礼中看護婦医師に支払つた合計金五万円というのが相当である。

(六)  休業損害 金三三万円

原告の本件受傷治療のための入院期間については、前叙のとおり当事者間に争いがない。

前掲甲第一二号証の九、成立に争いのない甲第五号証、第一三ないし第一五号証、原告本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる甲第一六号証、証人清水正二の証言、原告本人尋問の結果(ただし、右甲第一二号証の九の記載内容と原告本人の右供述中後示信用できない部分を除く。)及び弁論の全趣旨を総合すると、原告は、本件事故当時大阪産業大学工学部一回生に在学中であつたところ、アルバイトに従事し、日給金五五〇〇円を得ていたことが認められる。しかして、原告は、同人の本件受傷入院により右アルバイトに従事することができず合計金五〇万六〇〇〇円の収入を得ることができなかつた旨主張し、右主張にそう証拠として、前掲甲第一二号証の九の記載部分及び原告本人の供述部分がある。しかしながら、右記載部分及び右供述部分はにわかに信用できず、他に右主張事実を肯認するに足りる証拠はない。

ただ、弁論の全趣旨によれば、原告は本件受傷がなかつたならば本件入院期間中少くとも合計六〇日は右アルバイトに従事し得た、と推認できるから、原告の右主張も、この限度で肯認できる。

よつて、本件事故と相当因果関係に立つ原告の本件休業損害は、一日当り金五五〇〇円の割合で六〇日分合計金三三万円、と認めるのが相当である。

(七)  後遺障害による逸失利益 金一三五万五七一四円

(1) 原告に本件後遺障害が残存すること、その内容は、前叙のとおり当事者間に争いがない。

(2) 原告は、同人の右後遺障害はその障害等級一二級に該当する旨主張する。

しかしながら、原告の右主張を肯認するに足りる証拠がない。

(3) むしろ、成立に争いのない甲第一〇号証、乙第五号証の一、二及び弁論の全趣旨を総合すると、原告の本件後遺障害内容のうち右足関節の運動障害は、背屈が自動右二二度左三〇度、他動右二五度左三二度、蹠屈が自動右四五度左五〇度、他動右四五度左五〇度、内反が自動右二二度左二四度、他動右二二度左二四度、外反が自動右五度左七度、他動右五度左七度であること、自賠法施行令三条別表一二級七号でいう「三大関節」は股、膝、足を指すところ、足関節の可動領域の測定法においては、運動方向として背屈及び底屈を測定すること、右運動方向の正常可動領域は、背屈につき〇度乃至二〇度、底屈につき〇度乃至四五度であること、原告の右足関節の背屈領域は右のとおりであるから正常可動領域より更に広いことが認められ、右認定事実に、当裁判所に顕著な、別表一二級七号所定の「関節の機能に障害を残すもの」とは、関節の運動可能領域が健側の運動可動域の四分の三以下に制限されているものをいう点を合せ考えると、原告の右足関節の本件後遺障害は、未だ右一二級七号に該当せず、同表一四級一〇号該当にとどまる、というほかはない。

(4) 前掲甲第一〇号証、原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨を総合すると、原告は本件事故当時一八歳(昭和三九年一一月二八日生)の健康な男子であつたこと、同人は昭和六二年三月(当時二二歳)前叙大学を卒業し就職したが、その就労上同人の右後遺障害による支障を受けていることが認められ、右認定を覆えすに足りる証拠はない。

なお、原告の本件受傷の症状固定時が昭和六〇年八月一五日であることは、前叙のとおり当事者間に争いがない。

(5) 賃金センサス昭和六〇年第一巻第一表産業計企業規模計男子労働者学歴計二〇歳~二四歳によれば、その給与年額は金二四六万九二〇〇円であることが認められる。

(6) 所謂昭和六〇年度簡易生命表によると、原告の本件症状固定時における平均余命は、五四・八五歳と認められ、したがつて、同人の就労可能年数は、四六年と認めるのが相当である。

又、原告の本件後遺障害による労働能力喪失率は、所謂労働能力喪失率表を参酌し、五パーセントと認めるのが相当である。

ただ、原告の右後遺障害の存続期間は、右後遺障害の内容、その該当障害等級、原告の年齢等を総合し、本件症状固定時から一五年間と認めるのが相当である。

(7) 叙上認定の各事実を基礎として、原告の本件後遺障害による逸失利益の現価額を算定すると、金一三五万五七一四円となる。(ただし、一〇・九八一は、新ホフマン係数。円未満四捨五入。以下同じ。)

246万9200円×0.05×10.981≒135万5714円

(八)  慰藉料 金二一五万円

原告が本件受傷治療のため入通院した期間、同人の本件後遺障害の内容は、前叙のとおり当事者間に争いがなく、右後遺障害の該当等級については、前叙認定のとおりである。

右各事実に基づくと、原告の本件慰藉料を次のように認めるのが相当である。

入通院分 金一五〇万円

後遺障害分 金六五万円

(九)  右認定説示を総合すると、原告の本訴において請求し得る損害額は金四二八万七七一四円となる。

しかして、原告の本件治療費金四七二万二〇七六円は既払であることは、前叙のとおり当事者間に争いがないので、原告の本件損害総額は、右金四二八万七七一四円に右金四七二万二〇七六円を加えた金九〇〇万九七九〇円となる。

二  抗弁について判断する。

1  抗弁事実中本件交差点南西部に阪神高速道路摩耶入口が存在すること、本件事故当時雨天であつたこと、原告車が本件事故直前右交差点を北進したこと、右事故発生直前、原告車の直前を右折進行した車両があつたこと、被告車がその直後に右折進行して来たこと、本件事故が発生したことは、当事者間に争いがない。

2(一)  成立に争いのない甲第三号証の二、第四、第五号証、第九号証、証人清水正二の証言、原告本人、被告本人の各尋問の結果(ただし、右甲第三号証の二、第四、第五号証、第九号証の各記載内容中及び右証人、原告本人被告本人の供述中後示信用しない部分を除く。)及び弁論の全趣旨を総合すると、次の各事実が認められる。

(1) 本件交差点は、交通のひんぱんな場所で、しかも、本件事故当時、雨が激しく降つていた。

(なお、本件事故発生が午後六時三五分頃であつたことは、前叙のとおり当事者間に争いがない。)

(2) 原告は、右事故直前、本件交差点へ進入するに際し、対面信号機の標識が赤であつたため停止線で自車を一時停止させ、右標識が青になるのを待つていた。

原告の右停止時、原告の対面右側車線(二車線あり、これを進行する車両は、全て本件交差点南西部にある阪神高速道路摩耶入口へ進入する。)には、車両(いずれも四輪車。)二台が、同じく対面信号機の標識が赤から青に変わるのを待つて停止していた。

(3) 原告は、対面信号機の標識が青に変わつたので自車を発進させ、時速約三〇キロメートルの速度で右交差点内に進入した。

原告の対面右側車線に停止していた車両のうち原告から見て左側の車両が、右車両の対面信号機の標識が青に変わるのと同時に、それまでのスモールランプから前照灯に変え急発進し、原告車の約一〇メートル前方を横切るように右折し前叙摩耶入口方向へ進行し去つた。

原告は、専ら右車両の動向を現認しつつ、自車を同一速度で進行させていたところ、原告の対面右側車線に停止していた車両のうち原告から見て右側の車両即ち被告車が右折進行して来て原告の右側直近でそれまでのスモールランプから前照灯に変えた。原告は、この時点で初めて被告車の存在に気付き、衝突を避けるべく、自車を体動移動で左方に持つて行こうとしたが間に合わず、本件事故が発生した。

(二)  右認定に反する、前掲甲第三号証の二、第四、第五号証、第九号証の各記載部分、証人清水正二、原告本人、被告本人の各供述部分は、にわかに信用することができず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

3  右認定各事実を総合すると、本件事故当時の天候、時間、本件交差点の交通状況等から見て、原告にも、右交差点を通過するに当り前方を十分注視し自車の速度を減ずる等交通の安全を確認して自車を運転すべき注意義務があつたのに、同人がこれを怠つたため本件事故が発生した、というのが相当である。

よつて、本件事故の発生には、原告の右過失も寄与しているというべく、同人の右過失は、同人の本件損害額の算定に当り斟酌されるべきである。

しかして、原告の右過失割合は、全体に対し二〇パーセントと認めるのが相当である。

4  そこで、原告の前叙認定にかかる本件総損害額金九〇〇万九七九〇円を右過失割合で所謂過失相殺すると、原告の本件損害額は金七二〇万七八三二円となる。

三  ところで、原告の本件治療費金四七二万二〇七六円が既払であることは前叙のとおり当事者間に争いのないところであるから、右金四七二万二〇七六円は本件損害の填補として右金七二〇万七八三二円から控除すべきである。

しかして、右控除後の金額は、金二四八万五七五六円となる。

四  弁護士費用 金二五万円

証人清水正二の証言及び弁論の全趣旨によれば、原告は、被告において本件損害の賠償を任意に履行しないため、弁護士である原告訴訟代理人に本件訴訟の追行を委任し、その際相当額の弁護士費用を支払う旨約したことが認められるところ、本件訴訟追行の難易度、前叙認容額等から、本件事故と相当因果関係に立つ損害としての弁護士費用は金二五万円と認めるのが相当である。

五1  以上の次第で、原告は、被告に対し、本件損害合計金二七三万五七五六円及びこれに対する本件事故の当日である昭和五八年九月二七日から支払ずみまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求める権利を有するというべきである。

2  よつて、原告の本訴請求は、右認定の限度で理由があるからその範囲内でこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条を、仮執行の宣言につき同法一九六条を、各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 鳥飼英助)

交通事故目録

一 日時 昭和五八年九月二七日午後六時三五分頃

二 場所 神戸市灘区日出町一番先交差点

三 加害車(被告車) 被告運転の普通乗用自動車

四 被害車(原告車) 原告運転の自動二輪車

五 態様 加害車は、本件交差点内で右折すべく一旦停止し、続いて発進右折しようとした際、右車両のやや左前部分を、直進して来た原告の右足及び被害車右マフラー付近に衝突させた。

以上

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